8月1日、貨幣の歴史の中でも特筆すべき新しい現象が発生しました。ビットコインの分裂、ハードフォークです。
ハードフォークそのものは今回が初めてではありませんが、暗号通貨最大手と言うべきビットコインの「分裂」は、規模においても波及効果においても、従来とは装いを異にしています。
ここではまず、いったい何が起きたのか、を確認してみましょう。
次に、今回の経緯から明らかになった暗号通貨のシステムと「暗号通貨社会」の特徴や新たな課題、また世界史的に見た意味合いなどを、ゼロから考えてみたいと思います。
信用なき信用創造
すでにこのコラムでも記したように、8月1日の日本時間21時20分頃、ビットコインが「ハードフォーク」し、実質的に新たな仮想通貨「ビットコインキャッシュ」が生まれました。
この「生まれた」というのが非常に微妙なところなのです。
この「分裂」は、あまり良いたとえではありませんが、貯金の残高を記録していた家計簿のソフトウエアをまるまる、少しバージョンを違えてコピーした、というような側面を持っています。
簡単な話、もともとのビットコインを持っている人、全員に、同じだけの額面の「ビットコインキャッシュ」が「付与」されました。
仮ににいま1ビットコイン持っている人がいるとしましょう。ある朝(8月2日)貯金通帳を見てみると、昨日まで1ビットコインだった額面が、いきなり
1ビットコインBTC
1ビットコインキャッシュBTH
と、数字だけ言えば2倍に増えている。こういう現象が実際に8月1日に発生しました。私自身もいくばくかのビットコインを持っていますが、それが8月1日夜時点での数字で、そっくりそのまま「ビットコインキャッシュBTH」にコピーされていました。
単なるソフトウエア上の「バージョンアップ・コピー」ですから、この数字には本来「意味」はないことになります。