しかし、それから間もなく、ヤンゴン都市圏への外国投資が年率300~500%の割合で急増。特に、不動産への投資と大規模開発が急速に進んだことから、不均衡な都市開発が助長されることが懸念されていた。
そこで、2016年4月に発足した新政権の下、SUDPをアップデートすべく実施されたのが、今回の調査だ。
最大の特長は、市南部の中心的業務地区や、隣接するヤンゴン川沿いのウォーターフロント地区の再開発の提案が盛り込まれていること。
通りが東西南北の格子状に整理され、地図上でもひときわ目につくこれらの地区には、英領植民地時代に官公庁舎として使われていた歴史的な建造物が集積している上、緑の芝生が美しい公園や、パゴダなどの宗教施設も点在している。
しかし近年は、この地区にも例外なく車両が流入。道路の両脇に並ぶ路上駐車や交通渋滞によって路地という路地は車両が滞留し、歩行者はその脇を肩をすぼめながらすり抜けるという光景がすっかりお馴染みのものになっている。
また、この地区から歩いてすぐのところには、「ミャンマー版山手線」、こと、ヤンゴン市内を一周する環状鉄道や、長距離列車の始発駅であるヤンゴン中央駅もある。
現在、日本はこの環状鉄道や、ヤンゴンから首都ネピドーを通って第2の商業都市マンダレーまでつなぐ幹線鉄道の整備を円借款によって進めており、今後はさらに多くの人々や観光客がこの地区を訪れるようになるはずだ。
「その前に、この地区が本来持っている良さを取り戻し、観光客にとっても、生活する住民にとっても、魅力的な街に生まれ変わらせたい」
今回の調査を率いた日本工営の平野邦臣さんは、そう語る。
「将来的には、人々が歴史的地区の景観や雰囲気にひたりながら、ヤンゴン中央駅からウォーターフロントまでそぞろ歩きを楽しめる街になってほしい」