タイの外国人退職移住者対象のリタイアメントビザは、申請条件が、80万バーツ(約270万円)以上の銀行預金残高、あるいは、年金受給が6万5000バーツ(月々、約21万5000円)。

 しかし、チャンマイには、リタイアメントビザの申請条件に達せず、取得していない人もいる。彼らは、家具や家電付きのサービスアパートを、5000~6000バーツ(約1万7000円から2万円、月々)ほどで借り、食費を最小限に切り詰め、3万円以下の生活費で暮らしている。その人たちの多くが、年金支給額6万~8万円の日本での低所得者だ。

 ちなみに、タイの大卒初任給は約1万5000バーツから約2万1000バーツ(約5万~7万円、首都バンコク勤務)なので、日本人のリタイアプアはタイでは低所得者層ではない。

 そんなチェンマイには、日本人が貧困、単身という同じ境遇の中、肩寄せあって暮らす老人ホームのようなアパートが散在している。日本人観光客も訪れる夜店の近くにある7階建てのアパートは、日本の公営アパートを想像するような建物。

万引きや強盗まがいも後を絶たず

 住民の多くは、日本人のリタイアプアの60代から80代の人たちで、建物内は小奇麗に清掃が行き届いている。家具、トイレ、ベット、バス付きで1泊から宿泊可能。家賃は月々5000バーツ(約1万7000円)。

 「住民は日本人の高齢者がほどんど。NHKも見られる。ここと同じような高齢者対象のアパートもいっぱいある」(住民の日本人高齢者)という。

 彼らの中には貧困から地元のスーパーで万引きをしたり、日本人を騙して食いつないでいる貧困のどん底の暮らしを強いられている人もいる。

 6月9日、タイ在住の邦人男性(55)に対する傷害や監禁の疑いで、東京都大田区の無職、鶴添玲王容疑者(40)ら日本人3人が逮捕された。

 当局によると、容疑者らは被害者の男性をバットで殴るなど暴行し、3億円を払うよう脅迫していたという。加害者は暴力団関係者で、発見が遅ければ、被害者の男性は亡くなっていたかもしれない。

 また、日本人が移住する際、心許した日本人不動産関係者が、日本人に相場の2倍ほどの値で住宅を売りつける場合や、借金の抵当が設定されている物件を売りさばくケースも増えている。

 チェンマイでも、日本人同士のトラブルから、タイ人女性も絡んだ殺傷事件に発展するケースや、リタイアプアの人が比較的裕福な日本人を騙し、お金を無心する事件が後を絶たないという。