2017年5月、ある大学教授が米国のウェブメディア「ハフィントンポスト」に寄稿した衝撃的な告白が全米の注目を集めた。
その内容は、彼女が13歳まで叔父から繰り返し性的な虐待を受けていたことなど、少女時代の体験を赤裸々に綴ったものだった。
告白者は、外交関係の人材を輩出するジョージタウン大学(ワシントンDC)で国際安全保障を教えるクリスティン・フェアー准教授。1968年生まれ。50歳を目前にした彼女はなぜ今このような告白をしたのだろうか。
凄絶な少女時代の体験
フェアーはインディアナ州フォートウエインという人口20万あまりの町に生まれた。叔父(フェアーの母親の妹の夫)による性的な虐待は、彼女の就学前から始まった。叔父の一家は経済的に苦しく、フェアーの住む家にたびたび転がり込んではしばらく同居する生活をしていた。
小児への性的な虐待のケースにありがちのことのようだが、フェアーは虐待が始まった初期には叔父との肉体的な接触が不自然という感覚がなく、むしろ自分は愛されているのだと嬉しく思うことすらあったという。だが10歳になるころ、友達との会話などから次第に異常なことと認識するようになり、苦しみ始めた。それでも止まない虐待のせいで、彼女は摂食障害におちいり、悪夢に悩まされ、自殺を口にするようになった。
叔父は、自分の幼い息子と娘も性的な虐待の標的にしていた。息子ジャスパー(仮名)は成人して薬物中毒の女性と結婚し、子をもうけた。強い自殺願望があり何度も死を口にしたが、「死ぬ度胸もないくせに」と妻からなじられる毎日だった。ある日、ジャスパーはクルマで外出中に妻と口論になり、俺に度胸があるところを見せてやると言うなり運転席で自分の頭を撃ち抜いた。