(文:首藤 淳哉)
ブロークン・ブリテンの無料託児所から』
作者:ブレイディ みかこ
出版社:みすず書房
発売日:2017-04-19
保育園に子どもを迎えに行っていた頃、保育士が毎日のように子どもがこしらえたすり傷やたんこぶなどについて懇切丁寧に説明するのに面食らった。
「すべり台を降りた瞬間にお友だちとぶつかって・・・」、「ボールを追いかけていて転んで・・・」といった具合。こちらは田舎の野山を駆けずり回って育ったくちだ。子どもなんてケガするのが普通と呑気に構えていたものだから戸惑いを覚えてしまったのだ。
だがある時、それには理由があるのだと保育士経験のあるママ友が教えてくれた。ひとつはちょっとしたケガにもクレームをつける親(いわゆるモンペ)がいるから。予想外だったのはもうひとつの理由。間違っても保育士の虐待なんかでできた傷ではありませんよ、ということをアピールしているというのである。そんな可能性を毛ほども考えたことがなかったので、これにはびっくりした。
無視された元「チャヴ」の保育士
英国在住20年余、保育士をしながら英国社会の矛盾を鋭く突いたコラムなどを発表しているブレイディみかこの『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』を読みながら、そんな昔のことを思い出した。本書で描かれる英国社会の格差と分断の情景はショッキングなものだ。