プロローグ
サハリンと北海道を結ぶ天然ガスのパイプライン構想
安倍晋三首相は2017年4月27日に訪露して、第1次安倍内閣発足以来17度目の日露首脳会談を首都モスクワで開催した。会談後の日露首脳共同記者会見において、露V.プーチン大統領は以下のように述べた。
「ロシアは炭化水素資源の信頼できる供給者であり、日本のLNG消費量の約8%を供給している。日本はサハリン-1・2プロジェクトとヤマルLNGに参加している。安倍首相と、サハリンと北海道を結ぶ天然ガスパイプライ建設構想、ロシアから日本向け電力輸出構想(エネルゴ・モスト)や再生可能エネルギー分野の協力に関して話した」
記者会見でプーチン大統領がこのように述べているので、筆者は4月28日付日系紙ではこの部分がどのように言及されるのか、あるいは解説されるのか興味津々だったが、この箇所に言及したメディアはなかった。
その翌日の29日付日系各紙のうち2紙のみがこの部分を報じ、日本経済新聞は「サハリンと北海道を結ぶ天然ガスのパイプライン構想は検討が進む」と書いた。
一方、産経新聞は「サハリンと北海道を結ぶガスパイプラインや、ロシアから日本への海底電力ケーブルの敷設計画、再生可能エネルギーといった分野での協力について話した」と報じている。
日経記事は「日露首脳会談・共同記者会見要旨」の中で上記のように書いているが、共同記者会見でプーチン大統領は「(我々は)・・・・話した」としか言っていない。すなわち、「検討が進む」とは言っていない。
日経が独自の取材でプーチン大統領が「検討が進む」と言った裏づけが取れたのであれば、それはそれで1つの成果となる。しかし、もし記者会見で言った「話した」を「検討が進む」と訳したとすれば、それば誤訳・誤報の類になるだろう。
あるいは、政権側の意向を“忖度”したのかもしれない。細かい点だが非常に重要な点なので、あえてここに記す次第。
本件でもう1つ重要な点は、4月27日の首脳会談において安倍首相とプーチン大統領のどちら側からこの話を切り出したのかだが、この点は明記されていない。これも重要なポイントになるが、従来の経緯からすれば、日本側から提案したと推測するのが合理的判断となろう。