さまざまな原料から造られるお酢。

 調味料の名脇役ともいえる「お酢」について、歴史と現代科学の視点で追っている。前篇では、日本でのお酢の歩みをたどった。握りずしの誕生や普及に貢献するなど、お酢の果たしてきた役割は計り知れない。

 近代以降では、「お酢は健康によい」と言われるようになった。そして現在では“科学の目”で、その健康機能を確かめようとする研究が行われている。中でも2000年以降、血圧、食後血糖値、内臓脂肪といったメタボリック症候群と関わる各要素に対するお酢の作用が明らかになっている。愛知県半田市に本社のある大手食品メーカー「ミツカン」で、お酢の健康機能について話を聞いた。

1日大さじ1杯で、高めの血圧が低下

高橋幹雄(たかはし みきお)氏。Mizkan開発技術部開発技術1課。博士(工学)。名古屋大学大学院博士課程を修了後、2006年、同社に入社。中央研究所での業務を経て、現在、所属している開発技術部では食酢の健康機能を商品などに生かすための業務に携わる。

 ミツカングループの創業は1804(文化元)年。前篇で紹介した初代中野又左衛門の粕酢造りが端緒となる。研究面では、1942(昭和17)年に「中埜生化学研究所」(のちの中央研究所)を設立し、商品の開発や健康機能の解明などにつながる研究を進めており、歴史は長い。

 メタボリック症候群の各要素に関わる研究を本格化させたのは2000年以降だ。「それまで、民間では『お酢は体によい』という情報はありました。メーカーとして科学的根拠に基づいて情報発信するため、健康機能を科学的に検証しようとなったのです」と、食酢の健康機能の研究に携わってきた、開発技術担当者の高橋幹雄氏は話す。

「お酢はあくまで食品。治療が必要な方は医者による治療が必要と思いますが、症状の境界域にあるような人が健康を得て保つ上での機能を証明してきた点に意義があると思います」