学校の長期休暇で子どもの学力が一部低下、短期間で回復 研究

スペイン・マドリード市内の噴水で遊ぶ子供たち〔AFPBB News

たし算に始まりたし算に終わる物語

 連載「人はたすことをやめない~オイラーゼータ誕生物語」から「サラリーマンのための超入門・リーマン予想4」まで7回にわたり、ゼータ関数誕生物語からリーマン予想まで一気に駆け抜けました。

 この物語の根底に流れる通奏低音は「たし算」の音楽です。物語は小学校1年のたし算から始まります。次にひき算、たし算を繰り返す演算としてかけ算が定義され、ようやくわり算へとたどり着きます。

 次にたし算がクローズアップするのは高校数学のΣです。ここでは多くの項、それもべき乗したものの和を考えます。

 実際にたし算をすることは少なく、和を求めるためのΣの公式に慣れることで時間が過ぎていきます。もはや、たし算をしている気分ではなく、Σが何を意味するのかも分からぬまま授業に耐えているだけだった人もいたはずです。

 そして高校数学のクライマックスとして微分積分にたどり着きます。やはりここでも微分と積分が何を意味するのか半信半疑のまま、必死に公式を覚え命令された練習問題を解かされる奴隷のような日々だったかもしれません。

 積分は連載「人生を積分して知る驚きの結果、大学生は早下り坂」で取り上げました。無限に分割したものを無限にたす技が積分法です。言うならば積分法とは“スーパーたし算”と呼ぶにふさわしい計算法です。

 そして、連載「ジョン・ネイピア物語~対数は天文学者の寿命を2倍にした」「ビッグ・データ時代に対数表を味わう」では、高校数学に突如登場する「対数」が三角関数の発展の末に生み出されたイノベーションであることを紹介しました。その核心は「かけ算がたし算に変身するマジック」です。

 こうして、小学1年から高校3年まで続く数学とは「たし算に始まりたし算に終わる物語」であると言えます。

 小学1年のたし算については連載「知って得する、いかに早く計算するか」で「頭からたし算」という技を紹介しました。対数や微分積分さらにはゼータ関数とリーマン予想も連載で集中的に取り上げてきました。そこで、ここからΣをテーマにしていこうと思います。

Σの呪縛

 Σとはいったい何だったのか。わけの分からない記号、何の興味も関心も湧かない奇妙な呪文だとしたらそれは数学嫌いにする呪文だったと言えます。Σという呪縛の正体を見つめ直しながら、呪縛を解いていきましょう。

 Σとはたし算です。小学1年の算数教科書に登場する以前に、私たちはたすという演算を自然に習得しています。

 小学校の算数では公式を覚える作業よりも純粋に問題を解くことにウェイトが置かれます。ところが中学数学から突如、わけの分からない数学用語と記号の奇襲に遭い、公式に被弾されてしまいます。