暴走一直線のトランプ政権だが、その最大の理由は、トランプ政権の政策決定過程にある。アメリカ政府の省庁・機関にいた強力なヒューマンリソースが政策決定ラインから外され、ホワイトハウス内に入り込んだ少数の側近が、政治の経験と知識に乏しいトランプ大統領に影響を与えているのだ。
まさに絵に描いたような側近政治だが、安全保障面でいえば、問題の根が深刻なのは、その側近グループがその分野のプロフェッショナルではない人物ばかりで、しかも中心に、情報・知見より政治的主張を優先する「オルタナ右翼」(オルト・ライト)系の人脈が陣取っていることだろう。
トランプ大統領は、自分に批判的な主要マスメディアの報道を信用せず、「ロシアがトランプ政権誕生を水面下で支援した」と分析した米情報機関を遠ざけ、フェイク(偽)ニュースに満ちたオルタナ右翼系メディアなどが発信する情報を信用している。
世界に影響力をもつ超大国がそのような側近政治になってしまっていることは、当然ながら世界の安全保障環境に影響を与える。超大国アメリカが偏った視野の情報認識だけで、思いつきのような政策を実行していけば、世界が蒙る迷惑は多大なものになるだろう。
トランプ政権の安全保障政策を司る4人
では、トランプ政権の安全保障政策チームとは、どのような人々によって構成されているのか。
【スティーブ・バノン】(主席戦略官兼上級顧問)
まず、安保政策に限らないが、現在のトランプ政権で最も発言力が大きいのが、主席戦略官兼上級顧問のスティーブ・バノンである。彼は、オルタナ右翼の中心人物の1人であり、オルタナ右翼の宣伝に大きな影響力を持つニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の元会長だ。