(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年12月28日付)

 「人類の終わりの可能性」ホーキング氏、人工知能開発に警告

独ハノーバー(Hannover)で開催された情報技術見本市「CeBIT」の「ドイツ人工知能研究センター(German Research Center for Artificial Intelligence)」のブースで展示された人工知能搭載アンドロイド「AILA」と握手する来場者(2013年3月5日撮影、資料写真)。(c)AFP/CARSTEN KOALL〔AFPBB News

 何世紀もの間、ロンドンのテムズ川で船頭(ウォーターマン)たちは渡し船を操っていたが、交通機関の発達によって仕事を奪われた。彼らの運命はほとんど忘れられており、今日ではさほど重要ではないように思われるだろう。

 しかし、過去の教訓はしばしば未来の決断に影響を与えることができる。ロボットの台頭や人工知能(AI)のインパクトが話題になっている今、ロンドンの水上タクシーの歴史からは、新しい技術が引き起こす混乱を緩和するためのヒントが得られる。

 この大都市では長い間、船頭や船員が労働者の中で最も大きな割合を占めていた。ところが、彼らの乱暴な振る舞いへの不満の声に押され、議会は1514年にこの職業を規制する法律を作った。1555年にはまた別の法律が制定され、船頭らを統括する団体「カンパニー・オブ・ウォーターメン」が設立された。

 今日も存在するこの団体の職員コリン・ミドルミス氏は、一部の先輩は当然の報いを受けたのだろうと認めている。「我々船頭は、当時はかなり荒々しかった」と同氏。「向こう岸に渡る途中で料金を引き上げることも厭(いと)わなかったんですから」(中世のことながら、現代の配車サービス、ウーバーの「ピーク料金」をなぜか思い出してしまう話だ)。

 だが、この団体は渡し船の乗客の権利を守ることに加え、労働者のギルド(同業者組合)としても活動し、テムズ川で水運業に携わる労働者の訓練やその生活の防衛にも貢献した。

 時代が下ると、テムズ川に橋やトンネルができるたびに、この団体は、収入が減少してしまう船頭たちに施工主が補償を行うよう議会に請願した。2000年に開通したミレニアム・ブリッジの施工主も、この団体の慈善基金に、象徴的な金額ではあるが支払いを行った。技術の進歩は、社会配当という手段によって購入されたわけだ。

「船頭たちはいつも何らかの形で補償を受け取っていた」とミドルミス氏は言う。「技術が進歩するにつれて、そうやって問題を片付けていた」