「価値を生み出す者」と「価値を見出す者」が噛み合うことで“価値”は生まれる。そして、どれだけ「価値を生み出す者」がそれを“価値”だと思おうとしても、「価値を見出す者」がそれを“価値”だと思わなければそれは“価値”にはならない。
僕は「文庫X」という、文庫本の表紙をオリジナルの帯で覆い隠して販売した企画を手掛けた時、それを強く実感した。
「文庫X」は全都道府県の書店で展開されるほどの広がりを見せたが、僕は企画を実行する前、「文庫X」にそれほどの価値があるとは感じていなかった。企画が受け入れられ、爆発的に売れるようになった後で、なぜこの企画が受け入れられたのかを考察することはできるが、企画をスタートさせる前には想像もつかないことだった。
「価値を見出す者」が何に反応し、何を良いと思うのか。それを正確に捉えることは難しい。ピコ太郎の「PPAP」が世界的な大ヒットになる世の中ではなおさらだ。「価値を見出す者」に受け入れられて、初めてそれは“価値”になる。そう思わされる3冊を紹介しようと思う。
◎「文庫X」関連記事はこちら
前編「大ヒット「文庫X」の仕掛人が語るアイデアの源泉」
(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48294)
後編「この書店だからできた「文庫X」仕掛人の挑戦」
(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48295)
仏教は「非人間的」で「ヤバい」教えだった
『講義ライブ だから仏教は面白い!』(魚川祐司 ・講談社)
仏教の入門書なのだが、本書は小難しい本ではない。例えば、著者がゴータマ・ブッダの思想を一言で要約した一文を抜き出してみよう。
<現代風にわかりやすく、比喩的に言うとすれば、ゴータマ・ブッダは解脱を目指す自分の弟子たち、つまり出家者に対しては、「異性とは目も合わせないニートになれ!」と教えていたんです>
えっ?と思うだろう。僕もそう思った。ブッダというのは、もっと高尚で、人生の役に立つ素晴らしい教えを説いていたんじゃないのか? と。
本書を最後まで読めば、「異性とは目も合わせないニートになれ!」の真意はまた違った形で捉えることができるようになるだろうが、仏教というのは、その源泉は『「非人間的」で「ヤバい」教え』なのだということを認識させてくれるという意味で非常に面白い作品だった。