皆さま、お久しぶりです。さわや書店・上盛岡店の武蔵です。12月に入り、カレンダーも残すところわずか1枚、時間が過ぎるのは早いものです。

 さて、毎日数点から数十点の新刊コミックが発売されています。日々、新刊コミックを並べながら、面白そうなコミックがないか趣味と実益を兼ねてチェックしています。

 その中で、私が必ず手を止めて見入ってしまうキーワードがあります。それはずばり「19世紀末のロンドン」や、「ヴィクトリア時代」など。このキーワードが帯に書かれているのを目にするや否や、光の速さでコミックを裏返し、あらすじをチェックしてしまうという習性を持っています。

 以前にも書いたかもしれませんが、私、この時代が大好物なのであります。コミックにおける主食テーマでございます。もちろん、文庫や新書もこのテーマならすかさずチェックしております。

 というわけで、今回はヴィクトリア時代(1837~1901年)の英国に関連した書籍をご紹介していきたいと思います。

実在した謎の怪人・・・19世紀のロンドンに胸躍る

黒博物館 スプリンガルド
黒博物館 ゴーストアンドレディ』上・下 (藤田和日郎/講談社) 

『黒博物館 スプリンガルド 』藤田和日郎、講談社 (モーニング KC)、税別590円

 作者はもはや説明など不要だと思いますが、『うしおととら』『からくりサーカス』などが代表作の藤田和日郎です。舞台はヴィクトリア時代のロンドン。スコットランド・ヤード内に存在する、数々の犯罪の証拠や、写真などを展示している「黒博物館」に1人の男が訪れます。

 男の目的は世間を騒がせた怪人「ばね足ジャック」の左足。「ばね足ジャック」は夜道で女性を驚かせては高笑いを残して、飛び跳ね去っていく怪人でしたが、3年の空白の後、世間を震撼させる連続殺人鬼としてロンドンに舞い戻ってきます。

 最初は女性を驚かせるだけだった「ばね足ジャック」はなぜ殺人鬼となったのか。黒博物館を訪れた男の口から語られる事件の真相とは─。

 本作の舞台「黒博物館」は実在する一般非公開の資料館なのですが、さらに驚くことに「ばね足ジャック」も実在の事件とのこと。あまりに奇怪なキャラクターだったので、てっきり作者の創作かと思っていました。さすがに殺人までは起こしていないようですが。