「俺たちの会社を作ろうぜ!」

 幼稚園の年長の頃だったと思います。突然、いつも一緒に遊んでいた友達Aが言いました。そこで、もう1人の友達Bを誘い、3人で会社を設立することに。

 場所は、Aの実家が経営している電気工事店の駐輪場の一角をこっそりと拝借。屋根が付いているので雨の日も安心です。

 会社名は、A、B、私の3人の苗字の頭文字をそれぞれ一文字ずつ取って名付けました。そして拾ってきた板に会社名を書き込み、軒先に立てかけました。

 さらにそれぞれの家から、折り畳みのテーブルや風呂場で使うイスを持ち寄り、あっという間に事務所の出来上がり。いよいよ、私たちの会社の船出です。

 とはいえ、所詮は子どものままごと。

 買い物から自転車で帰ってきた、Aの母親の手によって、すぐに強制撤去されてしまいました・・・。

 今でも、ふと思い出してしまうこの出来事。もちろん幼稚園児だけに、「会社」という箱を作っても、何をするわけではありません。せいぜい、マンガ本を持ち込み、皆で回し読みするくらいだったはずです。

 ただし日ごろ耳にする情報から、「会社」の存在がとても楽しい居場所に思え、とにかく作ってみたかったのでした。

 そして大人になった現在、あの時のようなワクワクした高揚感を抱く機会が、どんどん少なくなったことに気づきます。きっとその高揚感を大人になっても持ち続け、常に挑戦し続けている人が、世界を変えていくのでしょう。

21世紀のビジネスのあり方に対する意見表明だ!

ビジネス・フォー・パンクス』(ジェームズ・ワット著、高取芳彦訳、日経BP社刊)。

『ビジネス・フォー・パンクス』 ジェームズ・ワット著、日経BP社、税込2052円

 <さあ、世界を変えてやろう(Let’s Change the World)>

 というプロローグ で始まる本書。イギリスのビール会社、「ブリュードック(BrewDog)」を親友のマーティン・ディッキーと犬1匹と立ち上げた著者が、自社の成功した秘訣を惜しみなく伝えています。

 しかしタイトルに「パンク」が入っているように、内容はかなり型破りなもの。例えば、経営者が経営理論を語る場合、自分の会社の歴史や業務内容を一通り解説してから細部に踏み込んでいくものですが、本書ではほぼ見られません。

 また、「事業計画なんか時間の無駄だ」「頭を下げ、バーターでも裏技でもなんでも使え」「銀行をたらしこめ」といった、従来のビジネス書では扱えなかったストレートな言葉を投げ込んできます。