韓国で朴大統領の退陣求めるデモ、4週連続

韓国ソウル中心部で行われた朴槿恵(パク・クネ)大統領の辞任を求める抗議デモの様子(2016年11月19日撮影)。(c)AFP/JUNG Yeon-Je 〔AFPBB News

 朴槿恵大統領の親友が国政に介入したという問題を巡って韓国が大きく揺れている。本稿はそのこと事体を議論するものではない。ここで問題にしたいのは、大統領の辞任を求めるために各地であわせて160万人もの人々がデモに参加したということである。

 なぜ、あれほどまでに多くの人がデモに参加したのだろうか。子どもを連れた人や若者が多かったと聞く。この点が、今回の一連の出来事を考える上での重要なポイントである。

韓国を学歴社会へと導いたもの

 若者や家族連れがデモに参加したのは、自分たちが苛烈な受験地獄に苦しんでいるのに、大統領の親友の娘が名門である梨花女子大に裏口入学したと聞いたからだ。それに腹を立てたのだ。

 裏口入学が不正であることに違いはないが、日本ではこの程度のことで150万人以上もの人々がデモに参加することはないだろう。まあマスコミが叩けば十分である。しかし極端な学歴社会である韓国では、それが大衆の怒りに火をつけた。

 韓国が学歴社会になってしまった背景に儒教と科挙がある。儒教と科挙を発明したのは中国。それを朝鮮半島に本格的に取り入れたのは李氏朝鮮(1392~1910年)とされる。それ以来600年にわたって、儒教と科挙は朝鮮半島に住む人々の心と行動を支配してきた。

 科挙とは試験によって政治家や高級官僚を選ぶシステムのことである。隋に始まり宋時代に完成したとされる。科挙は誰でも受けることができる。ただ、相当長い期間にわたって受験勉強を行う必要があり、また書物の価格が高かったことから、結果的に試験に合格するのは富裕層の子弟に限られた。

なぜ中国以上に影響力を及ぼしたのか

 科挙は高倍率、ほんの一握りの人間しか合格できない。そのため、国が大きい中国では、科挙が決定的に人々の心を支配することはなかった。ほとんどの人は科挙とは関係ない世界に生きていた。