牧草だけで育てられたという牛肉はどうかと、ハンバーガーをかじってみた。牛肉独特のねっとりした舌触りが少なく、悪く言えば少しパサパサしていて「Grassy flavor(草くさい)」風味だ。放し飼いにされた牛は運動量が多く、筋肉質になりがちなこともあるだろう。
アメリカ人は、穀物飼料で育てた脂(あぶら)の多い高カロリーな肉を食べ慣れている。ヘルシーとはいいながらこうした淡泊なハンバーガーがアメリカ人に受け入れられるのか疑問である。
だが、マクドナルドなどと比べて値段が1.5~2倍近くもするこのハンバーガーを、若者たちが列をなして買っている。一体これはどうしたことか。
健康マニアが多いミレニアル世代
「史上最高のオーガニック」を掲げるエレベーション・バーガーは、首都ワシントンの南隣、バージニア州で2005年に誕生した。創業者のハンス・ヘスは、自分の子供たちに食べさせたい理想の外食を妻と一緒に考えるうち、安全と健康を最優先するコンセプトにたどり着いたという。
値段は高いが付加価値も高いハンバーガーは評判を呼び、3年後の2008年にはフランチャイズ展開を開始。現在は国内外に53店舗を構える。
外食業界では、エレベーション・バーガーの急速な成長は「ミレニアル世代」からの支持によるところが大きかったと見られている。
ミレニアル世代とはおよそ35歳以下の世代を指す。ベビーブーマーの子供たちだが、親世代より人口が多い。数え方にもよるが、ミレニアル世代は最大で米国総人口の3分の1に達する大集団であり、彼らの消費性向が今後のアメリカのビジネスを大きく左右することは間違いない。
彼らは食生活についてどう考えているのか。あるコンサルタント企業の調査によれば、ミレニアル世代の26%が自分を「健康マニア」と自認し、自分の体に何を入れるのかについてきわめて高い意識を持っているという。彼らは安全で健康的な食品であれば、値段が高くても買うことを躊躇しない。筆者が見たジョージタウン大学の学生たちは、マニアとまではいわずとも健康への関心が高いグループなのだろう。