6月8日にロシアの新型旅客機「MS-21」のロールアウト式典があり、その姿が公開された。現在のところ今年12月から来年2月までの間に初飛行するとされている。
MS-21は「ボーイング737」、「エアバスA320」と同等の座席数をもつ航空機である。
既にロシアで量産している「スホーイスーパージェット」は、リージョナルジェットという小型旅客機であり、ターゲットはエンブラエルとボンバルディアが3位争いを繰り広げてきた市場だが、MS-21はボーイングとエアバスという2大メーカーがトップ争いをしている1つ上の市場に参入することになる。
ロシアの新規参入には勝ち目がないのではないかという声も聞こえる。航空機産業の参入の難しさやこれまでの歴史から見ると、そのような声は当然出てくるだろう。
しかし、ただ新規参入であるというだけで、または、ロシア製であるというだけで勝ち目がないと決めつけるのは短絡的である。例えば、エアバスも当初は懐疑的に見られていたし、苦しい時期も長かった。
果たしてMS-21に勝算があるのかについて検討してみたい。
MS-21はどのような飛行機か
MS-21を一言で表現すれば、「150人くらい乗れる旅客機」である。前述のとおりボーイング737やエアバスA320もサイズの違う派生があるが、大雑把に言うとこの「150人くらい乗れる旅客機」になる。
なお、正確には、MS-21には「MS-21-300」と「MS-21-200」の2つの派生の開発が進められており、先行する300型は2クラスで163席、200型は2クラスで132席である。
対して、日本の「MRJ」やスホーイスーパージェットは「100人以下の旅客機」である。
「150人くらい乗れる旅客機」と「100人以下の旅客機」では市場のサイズに決定的な違いがある。
2015年の旅客機の引渡し数で需要を数えると、前者はボーイング737とエアバスA320の合計で986機に達するのに対し、後者はエンブラエル、ボンバルディア、スホーイのリージョナルジェットの合計で175機に過ぎない。
市場の大きさに5倍以上の差がある。MS-21は年間約1000機売れる最も大きな市場を狙うことになる。
MS-21の特徴は3つある。1つは胴体が若干太いことである。この恩恵として、客室がA320よりも11センチ広くなっている。狭い座席で長時間過ごす乗客にとってはありがたい。