夜の日本銀行夜の日本銀行(2011年7月11日撮影)。 Photo by Guwashi999 via flickr.

 日銀が1月29日にマイナス金利政策を導入して以来、追加の緩和は見送られている。一部には強い追加緩和の期待があったためか、追加緩和見送りのニュースで株価が急落することもあった。なぜ追加緩和が見送られたのか、金融政策のフレームワークに立ち返って考察してみたい。

 日銀のマイナス金利政策は、金融機関が日銀に持つ当座預金を、従前通り+0.1%を付利する基礎残高(A)、金利ゼロのマクロ加算残高(B)、そして新たにマイナス金利が課される政策金利残高(C)の3分割して、その金利水準と政策金利残高(C)を操作する制度設計とした。

 日銀の操作変数は2012年に翌日物金利から国債等の買入で増加するマネタリーベース(以下、MB)残高に変更されたが、当初、マイナス金利が付与される(C)政策金利残高は、MB残高と同一のペースで増加すると見られていた。これは、操作変数はMB 残高のまま、限界的な金利をマイナスとすることで、金利にも操作変数の意味合いを持たせる、敢えて言うなら「ダブル操作変数」と理解できるスキームだった。

 (C)政策金利残高にマイナス金利を課す制度設計について黒田総裁は、4月13日の講演で、「当座預金を3階層に分割し、従来どおりの『+0.1%』、『0%』、そして『-0.1%』を適用する階層構造を採用しました。そのうえで、『0%』を適用する部分を調整していくことにより、マイナス金利を適用する部分を限定することとしました。これは、『価格は、平均コストではなく、限界コストで決まる』という経済学の入門コース13(Econ101*1)で習う原則を応用したものです。つまり、金利形成において意味があるのは、取引主体が追加的に1単位の当座預金残高を積み増す場合のコストだということです」と述べている*2

*1 経済学の初歩的な教科書の意

*2 https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160414a1.pdf