マイナス金利に踏み込んでもインフレを作り出すことができない。それは日本だけの現象ではない。
ヨーロッパ中央銀行もマイナス金利を採用しているが、思ったように物価を上昇させることができない。米国のインフレ率も低くなっている。ほぼ全ての先進国でインフレ率はゼロ付近をうろついている。
そして、一時は石油価格が1バレル=140ドルになるなど、あれほど騒がれた資源インフレもウソのように終焉してしまった。
なぜ、このようなことが起きているのであろうか。私はアジアの農業と農民を見て来たが、昨今の世界経済の変化には、中国の農民の動きが大きく関わっている。
かつて世界経済のエンジンだった農民工
アジアの農民はコメを作ってきた。化学肥料のない時代、コメはコムギなど他の穀物より単位面積当たりの収穫量が多かった。また水管理が必要なことなどから、コメを作るにはコムギよりも多くの人手を要した。
こうしたことが重なって、アジア農村の人口密度は高くなっていった。コメは主にインド以東のアジアで作られているが、現在、そこには世界人口の約半数が居住している。
しかし近年、人口は農村から都市へと移動している。日本でも昭和20年代後半から昭和が終わる頃まで、多くの人が農村から都市へと移住した。同じ現象がアジア各地で起きている。そして、それは13億人の人口を擁する中国で特に顕著である。