疲れに対して、食はどう効くのか。「食と抗疲労」をテーマに研究者に話を聞いている。
応じてくれたのは、梶本修身氏。疲労医学を専門に研究する国内ではユニークな大学講座「疲労医学講座」で疲労研究を行い、2003年に産学官連携で立ち上がった「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」のリーダーも務めた。2015年8月には、東京・新橋で、疲労研究の成果を社会でより生かすため「東京疲労・睡眠クリニック」も開業している。
前篇(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47099)では、疲労と食についての基本的な知識を聞いた。食事は「疲れを起こしにくくする」上で重要という話、またコーヒーや栄養ドリンクなどでは抗疲労作用を期待できないという話もあった。
いまは飽食の時代。スタミナ食をたくさん食べて元気になるという「量」重視の時代から、薬のような作用のある食品成分を効果的に摂って疲労に対処するという「質」重視の時代になりつつあると梶本氏は言う。そこで後篇では、梶本氏がリーダーを務めた研究プロジェクトで見出された、抗疲労効果のある食品成分について話を聞くことにする。その成分は、ごく身近な食材にも含まれているという。
渡り鳥の体から鋭敏な作用の抗疲労物質が
――前篇では、疲労研究の中で、抗疲労効果のある食品成分が見つかったという話でした。それは、どんなものでしょうか。
梶本修身氏(以下、敬称略) 「イミダゾールジペプチド」(以下、イミダペプチド)という、アミノ酸が結合した成分です。食品では鶏の胸肉に多く含まれるほか、マグロ、カツオなどの回遊魚にも含まれています。現在はサプリメントにもなっています。
――食材にどのくらいの量が含まれているのですか。
梶本 鶏の胸肉では100グラムあたり約0.2グラムのイミダペプチドが含まれています。ごくわずかな量でも抗疲労の効果はあります。