疲れには栄養ドリンクより鶏の胸肉だ

疲労研究者に聞く「食と抗疲労」(後篇)

2016.06.24(Fri)漆原 次郎

――抗酸化作用がある食品成分として、これまでポリフェノールはよく知られていました。抗疲労の効果はないのですか。

梶本 たしかにポリフェノールの代表的な成分であるアントシアニンなどには抗酸化作用があります。けれども、それらは体内の部位を選ばず、どこにおいてでも抗酸化作用を発揮するのです。脳にたどり着く前に多くが使われてしまうため、脳での抗酸化作用はごく限られます。一方、イミダペプチドは再合成のしくみをもっているため、脳の自律神経でピンポイントに作用するのです。

精神的な疲れにも効果を発揮

梶本 修身 氏梶本 修身(かじもと おさみ)氏。医学博士。大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。東京疲労・睡眠クリニック院長。1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。2003年より産学官連携の「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。睡眠中の疲労の原因となる「いびき」の症状改善のため開発した「疲労回復CPAP」の臨床応用などを目指し、2015年に東京疲労・睡眠クリニックを開業。最新刊『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)のほか、『だからあなたは疲れている』(永岡書店)『最新医学でスッキリ!「体の疲れ」が消える本』(成美文庫)など著書も多数。

――ほかの食品成分の抗疲労作用については、どんなことが解明されていますか。

梶本 プロジェクトで抗疲労効果が確認された成分の1つにコエンザイムQ10があります。酸化作用とは逆に働く還元作用があります。ただし、食品中にはわずかしか含まれないため、高価なサプリメントとして多く摂取しなければならず、費用対効果はあまりよくありません。

――梅干などの酸っぱさのもとであるクエン酸も、抗疲労成分とされますが、効果はどうですか。

梶本 クエン酸も抗疲労効果が確認されました。エネルギーを生むためのクエン酸回路というしくみに作用して、酸化ストレスでエネルギー不足に陥った細胞に再びエネルギーを供給し、疲労軽減をもたらします。レモン2個、梅干2~3個、お酢30〜45ミリリットルにそれぞれ2〜3ミリグラム含まれていて、摂取も比較的簡単です。

 ただし、エネルギー源となる糖が足りている人は、クエン酸回路を働かせる必要がないので、あまり必要ないのです。偏食で糖が足りてない方や、十分な食事ができていないお年寄りの方などには、クエン酸の抗疲労効果が働くといえます。

――いまのところ、イミダペプチドが最も有効に抗疲労効果を発揮しそうですね。食事でどのように摂ればよいでしょうか。

梶本 鶏の胸肉は、イミダペプチドが多く含まれているので、食材としてふさわしいといえます。イミダペプチドは熱に対して安定的なので、焼く、煮る、炊く、どんな調理をしても摂れます。ただし、水溶性なのでスープにするときはスープを飲んでください。それと直火焼きによる焦げは体によくないので、気をつけたほうがよいと思います。

――摂取し続けていると、どのくらいの時期にどのような効果を得ることができるのでしょうか。

梶本 研究では、1日200ミリグラムの摂取で2週間、また1日400ミリグラムの摂取で1週間、イミダペプチドを摂取し続けていると、75%の人が「疲れにくくなった」と自覚するという結果が出ています。鶏の胸肉100グラムには、約200ミリグラムのイミダペプチドが含まれているので、これが目安になります。

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