2016年6月10日午前、ソウル地方検察庁の捜査陣がソウル中心部のロッテグループ本社など17カ所に一斉捜査に入った。韓国メディアは、大規模捜査を受けて「グループの創業以来の危機」と報じている。
検察の企業への捜査としては異例の規模と中身だった。
捜査陣が急襲したのは、本社の中枢である「政策本部」のほか、創業者である重光武雄総括会長(辛格浩=シン・ギョクホ=1921年生)の居住・執務スペースがあるホテルロッテの34階、さらに重光昭夫会長(辛東彬=シン・トンビン=1955年生)の自宅、関連会社など。
異例の大規模捜査
ソウル中央地検は、企業の不正を追及する特別捜査4部のほか、サイバー犯罪などを担当する尖端犯罪捜査1部の捜査官も投入した。2つの部で合わせて200人がこの日の捜査にあたった。
「2つの部が動員されたことも、200人も投入されたことも異例の捜査」(韓国紙デスク)だという。
何が狙いなのか。検察は韓国メディアに対して、「グループ全体の不正な資金作りなど」と説明している。
グループ企業間、あるいは取引先との資金の流れを通して巨額の「裏金」を作っていたと見ている。さらに、オーナー家とグループ企業の間で不正な取り引きをして、オーナー家に利益を与えた疑いも出ている。韓国メディアは「少なくとも3000億ウォン(1円=10ウォン)」に達するという。
捜査は進行中だが、韓国メディアは、グループ企業がオーナー家が保有する別のグループ企業株や不動産を高値で買い取って利益を回していたことなどを指摘している。さらに、これとは別に、事業を有利に進めるための裏金つくりがあったとも報じている。
最悪のタイミング
ロッテグループの経営権を父親から継承して、その基盤を固めようとしていた重光昭夫会長にとっては、まさに最悪のタイミングだった。
重光昭夫会長は、1年以上前からロッテグループの経営権を巡って創業者の重光武雄総括会長や、実兄の重光宏之(辛東柱=シン・トンジュ=1954年生)前ロッテホールディングス副社長(日本法人)との間で激しく争っている。