「こんなことが起きるなんて・・・」。2016年5月末に起きた事故で3人が死亡したことが韓国社会に衝撃を与えている。信じられない事故であるだけでなく、その背景に韓国社会が抱える深刻な構造的な問題が垣間見えるからだ。
“death fell from the sky”――2016年5月27日、オバマ米大統領は、広島での演説をこう切り出した。「空から死が降って来た」。71年前の原爆投下のことだった。
「空から死が降ってきた」
この4日後、韓国南東部の光州(クヮンジュ)で、信じられない悲劇が起きた。光州郊外の谷城(コクソン)郡の役場に勤務する公務員A氏はこの日も残業をこなして最終バスで帰宅した。
「今から帰る」と連絡を受けた妻と5歳の長男が光州市内のアパート近くのバス停留所で待ち受けていた。
どこにでもある幸せな家族の風景だった。妻は妊娠8か月、長男は乗れるようになった自転車でA氏の後を停留所からアパートに向かった。
アパートまであとわずか。A氏が、2人を振り返った。「早くおいで」。長男にこう語りかけたその瞬間、悲劇が襲った。
A氏の真上から男が落下して来たのだ。
2人は重なり合うように倒れた。落下して来た男は頭を打って死亡。A氏も頭を強打して担ぎ込まれた病院で死亡した。
何が起きたのか?