マリ・ジェンネの泥のモスク(筆者撮影、以下同)

 ビールを飲むために、その晩、私は商店やスーパーでスパイ行為を繰り広げなければなければならなかった。やっと見つけた1軒は輸入食品を売る小さな商店だったが、缶ビールはこっそりと置いてあるのみで、その時に、ああ私はイスラム圏へ来たのだなと思った(と言っておいてなんだが、ベトナム料理屋に入ってみるとウイスキーを飲まされた。外者に対しては規制がゆるいのだろうか)。

 ビールはCastelでマリの地ビールではなかったし、値段も600セーファーフラン(120円)と高かったが、ろくなことがなさそうな首都バマ コの夜に彩りが必要であると缶ビールを買った。宿に戻って藁敷きのベッドでぷしゅりと開け、足元に置こうとして半分以上を床にこぼし、やっぱりろくなことがないと思って泣いた。

 北西アフリカに位置するマリは、住民の9割がイスラム教徒の国だ。

 2012年頭に北部でトゥアレグ反乱に端を発する紛争があり、その後フランス軍の介入でいったんは落ち着いていたものの、結局は外国軍やイスラム武装勢力が入り乱れて紛争がこじれ、最近になってまたきな臭くなっているらしい。私が行った時期は情勢が安定していて首都や中南部の注意レベルが引き下げられていたが、今はどんな状態か、分からない。

 マリにイスラム教が浸透したのは早かった。