アルハンブラ宮殿(筆者撮影、以下同)

 スペイン南部、グラナダの町のバル(居酒屋)に入ると、お酒一杯につきタパスと呼ばれる小皿のおつまみが一品、タダでついてくる。生ハムやサラダといったいかにもつまみ然としたものから、パエリア、パン、クスクスといった炭水化物、シーフードや肉のグリル・煮込みなどのメインディッシュを取り分けたようなものまで、この町のタパスのバリエーションは広い。

 バルを5軒もはしごすればすっかりおなか一杯になってしまうグラナダには、だからはしご酒文化が深く深く根付いている。

 その日もバルをはしごした私はすっかり酔っぱらって、わいわいとテンション高く、グラナダにある友人の実家に帰った。友人のお母さんことスペインのママは「おやおや」という顔で私を出迎えて、「あなたの過ごすスペイン最後の夜に乾杯」と、とどめの一杯を出してくれた。

バルで出てくるタパスの一例
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イスラム世界のイメージそのものだったアルハンブラ宮殿

「今日のアルハンブラはどうだった?」

「繊細で、橙色で、とてもイスラムでした」と私は答えた。

「ここもイスラムだった時があったからねえ」とママ。500年も前の男の浮気を懐かしむような、うっとりした語り口でいう。