ひとみは2016年2月17日、種子島宇宙センターから打ち上げられ、無事、地球の周回軌道に乗った。その後、初期の機能確認作業や試験観測などを行っていたが、3月26日以降、通信が途絶え、ひとみを制御することができなくなった。

 しばらく衛星の状況を把握できない事態が続いていたが、地上からの観測結果や米国からの情報などを総合すると、ひとみは異常な回転運動を起こし、機体がバラバラに破壊された可能性が高いと判断せざるを得なくなった。JAXAは4月28日、復旧を断念し、原因の究明に専念することを決定した。

 機体が破壊されたと思われた後も、ひとみからの電波が受信できていたことから、わずかではあるものの復旧の可能性があるとの見方も存在していた。だが、最終的にはこの電波もひとみからのものではないことが判明しており、最後の望みも絶たれてしまった格好だ。

 衛星が破壊されるというのは、極めて深刻な事態であり、今回のプロジェクトは100%失敗だったと判断せざるを得ないだろう。

ひとみは当初、回転していなかった

 JAXAはその後、原因究明を続け、5月24日に調査報告書を公表した。報告書では、衛星が破壊されるまでのプロセスが詳細に示されており、その根本的な原因にも言及している。

 ひとみは、異常な回転が止まらなくなり、最終的に破壊されてしまったが、最初から異常な回転が発生していたわけではなかった。しかし、姿勢を判断する慣性検知装置が何らかの理由で異常値を検出し、制御系システムは機体が回転していると誤認識してしまった。