高校生の頃、担任からある一言を言われた。それがいまだに私の心に残っている。
当時、私は人間関係に悩んでおり、勉強にも部活にも身が入らず、精神的につらい日々を送っていた。一方で、大学受験を控え、自分の可能性について、自分の将来について漠然とした不安を抱えてもいた。
表面的には明るく振る舞っているつもりではあったが、担任は私の内心を見抜いていた。若い女性の先生だった。
放課後に話があると言われ、教室に残っていると先生にこう言われた。「ねえ、どうした?何かあった?」。
とぼけて強がってみようかとも思ったが、もはや見抜かれているなと観念し、悩みを打ち明けた。先生は一生懸命に話を聞いてくれ、少し涙ぐまれた様子でこう言った。
あなたの力はそんなものじゃない!
「話してくれてありがとう」
「いやいや、こちらこそです! 本当に話を聞いてくれてありがとうございます!」
本当はそう言いたかったが、当時の私は照れくさくて素直にそれが言えなかった。その後、先生はこう言ってくれた。
「そうやって悩むのも分かる。でも、もったいないわ。あんたの力はそんなもんじゃないんやから」
あんたの力はそんなもんじゃない。その言葉は私の心に響いた。素直に嬉しかった。そして、二十数年経った今でもその言葉は色あせることなく心に残っている。
人間には成長欲求という欲求がある。もっと自らの能力を高めたい、苦手を克服したい、創造的、生産的でありたいとする欲求である。その欲求から転じて、次のような欲求を抱く。
「自分の成長を信じたい」
「自分の可能性を信じたい」
「自分を信じたい」