先日、ある人と飲みに行った際にこんな話を聞かせていただいた。
「本社から子会社の出向から戻って本社の役員になってほしいと言われました。でも、その話は断ったんです」
彼は本社に戻って役員に返り咲く日を夢見て子会社の社長を頑張ってきたという経緯を知っているだけに、私は驚いた。
「今の子会社の社長という仕事は本当にやりがいを感じる仕事で、定年するまでやっていきたい仕事だと思えるんです。本社に戻って役員になるということを目指してこれまでやってきました。本社に戻れば給料もうんと上がる。でも、断ることに迷いはありませんでした」
高い給料を辞退した理由
本社の役員になるというのは周囲も羨む出世である。「ついにあいつ子会社から戻って役員になったよ」。そんなふうに社内でも噂されるだろう。
今よりも高い給料を提示されたとのことなので、この話を受けた場合、生涯収入にも大きな差が生まれただろう。地位もお金も放棄して、やりたい仕事をやる――。
それほどまでしてやりたい仕事を見つけることができた彼は幸せなのだと思う。
彼が今の仕事に魅力を感じた理由を聞くと、一番の理由は一緒に働いている仲間が素晴らしいということだった。
「会社を成長させるために、自分は何をすればいいですか」
「会社が良くなるためなら、少々の無茶でも頑張りますよ」
そんなことを気さくに言ってくれるメンバーだった。自分の仕事が終わっても忙しそうにしている人がいたら、「大丈夫? 手伝おうか?」と自然に声をかける。
新人が不慣れな仕事でもたついていると近くにいる人間が「どうした? 大丈夫か?」と声をかけて手伝う。突発的に大きな仕事が入った場合、自分の担当外でもその仕事を手伝おうとメンバーが自然と集まる。