FIFA President Sepp Blatter gives a thumb up at the opening of the 65th FIFA Congress in Zurich on May 29, 2015. (c)AFP/FABRICE COFFRINI

 以前、私は大手の監査法人に勤務していた。大きなオフィスに何百人という人間が働いていた。そのオフィスのフロアには清掃をするスタッフの方が何人かいらっしゃった。

 清掃の方とは特に面識があるわけでもなく、すれ違う時などは会釈をする程度だった。ある時、見たことのない小柄な清掃のお兄さんがいた。

 新しく入った人かなと思いつつも、そのまま通り過ぎようとすると「こんにちは!」と声をかけられた。

 不意の声がけに驚き、そのお兄さんの方を見ると笑顔でこちらを見ていた。私も慌てて、「こんにちは」と挨拶した。何とも律儀な方だと思い、その場を後にした。

相手の態度に構わず笑顔で挨拶

 それから、1週間ほど経ってからフロアを歩いていると、例の清掃のお兄さんとばったり会った。

 軽く会釈ぐらいした方がいいかなと迷っていると、お兄さんは私を見つけて、「あっ!こんにちは!」とまるで数年ぶりに友人に会ったかのごとく、嬉しそうに私に挨拶してくれた。

 「えっ!そんなに嬉しそうに挨拶してくれるの!?」と内心は戸惑いながらも、私も何とか笑顔で挨拶をした。

 以後、その清掃のお兄さんは会うたびに嬉しそうに挨拶をしてくれた。そのお兄さんの行動を見ていると、会う人会う人すべてに笑顔で「あっ!こんにちは!」と嬉しそうに挨拶をしている。

 挨拶をされた人は、笑顔で「こんにちは!」と返す人、ちょっと引き気味にほぼ無視で通り過ぎていく人、その反応は様々である。

 しかし、そのお兄さんは相手の反応がどうであれ、すれ違うすべての人に笑顔で挨拶をする。1日に何十人、何百人という人とすれ違うだろう。その姿は見事だった。