「彼は仕事はできるんだけどねぇ。当たりがきつくて困ってるんですよ。彼の部下は相当ストレスが溜まってみるみたいで、社長の私に直接クレームを言ってくるんです。もうあの人の下では働きたくないって」
「でも、彼は実際仕事ができるし、誰よりも案件をこなしてるから、ちょっと天狗になってるところがあるんです」
仕事はできるが、組織の空気を乱す。ただ、本人は「仕事をこれだけやっているんだから、とやかく言われる筋合いはない」と言わんばかりの強気の態度。
確かに仕事のパフォーマンスは高いので、社長もなかなか強く言えない。その結果、組織の空気は重く、その人の下で働く人たちは強いストレスを抱え続ける。
どの会社にもいる困ったリーダー
こういった例は決して珍しくはなく、私が受けるご相談の中でも非常に多い。もしかしたら読者の皆さんの身の回りにもこういった人がいらっしゃるかもしれない。
経営コンサルタントとして複数の会社を見てきた感覚では、程度の差こそあれ、こういったタイプの人はそれなりの規模の会社になると、だいたい1人や2人はいる。それだけに、こういった人材の扱いに悩むリーダーは多い。
ある会社で、新しく事業所を出した時の話である。社長は業界経験が長いベテランの男性をリクルートしてきて、その人を事業所の所長に据えた。
加えて、業界経験がほとんどないスタッフを5人採用し、その所長の下に配属した。それで事業所はオープンしたのだが、3か月ほど経ってから社長が事業所の様子を見に行くと、事業所内の雰囲気がピリピリしている。
スタッフに所長を呼んでもらうと、所長が「どうも社長!」と笑顔で出て来た。
「状況はどうですか?」と社長が聞くと、「数字は順調に上がっていますよ」と得意気に答える。数字がちゃんと上がっているのであればいいかと社長は事業所を後にしたが、事業所の雰囲気に何か違和感を覚えたという。