肩を抱き合ってギリシャの首相官邸に入るギリシャのアレクシス・チプラス首相(右)とフランスのフランソワ・オランド大統領(2015年10月23日)(AFPB

 私は大人数で飲むことよりも2人で飲むことの方が多い。2人で飲みに行くと複数人で飲みに行った時には聞けないような深い話がよく聞ける。

 特に「あの出来事があって自分は変わった」というような自分の生き方を変えるきっかけとなったことの話を聞くのが好きだ。

 これまでたくさんの方の話を聞いてきて思うのは、自分の生き方を変えるきっかけとなったことの多くに、影響力のある人が同じ目線に立って深く共感してくれたということがある。

 これまでに聞いた2つのエピソードをご紹介したいと思う。

若者を変えた優しい祖母の一言

 高校時代、部活に熱中していてあまり勉強はしなかった。部活を引退後も勉強に身が入らず集中力も散漫で、ずるずると大学を受験した結果、どこの大学も受からなかった。

 働きに出ている両親に代わって自分を育ててくれた祖母にその結果を伝えた。穏やかで優しい祖母は、その結果を聞くと目を真っ赤にして、震える声で「よく頑張ったな。つらかったな」と自分を励ましてくれた。

 祖母が泣く姿を初めて見た。「よく頑張ったな。つらかったな」。そう言われ、情けない気持ちと後ろめたい気持ちでいっぱいになった。

 頑張ったなんてとても言えない。もう二度とばあちゃんを泣かしてはいけない。その思いで一念発起し、浪人生活を始めた。そして、猛勉強の末、翌年、第1志望の大学に合格した。

 給料のほとんどは売り上げに連動して支給される会社で営業マンとして働いていた。朝から晩まで歩き回って頭を下げて回るも、契約が取れないため給料はかつかつ。

 家族を養うのも危うい状態で、経済的にも精神的にも追い詰められていた。今の自分の歳を考えると転職も厳しい。悲壮感が漂う自分を会社の同僚たちは次第に避けるようになっていた。