しかしながら、政治的イニシアチブによって化石燃料からクリーンエネルギーへの転換が促進されるものの、その結果、エネルギーコストが大幅に上昇し、人々の暮らしや国の経済成長の足を引っ張るようではいけません。
先進国が先端技術、中国が製造を担当する
そこで、国連を中心とした政治的イニシアチブがグローバルスケールでCO2削減に取り組んでいる一方、産業界の経済的イニシアチブがグローバルスケールでクリーンエネルギーのコスト削減に取り組んでいます。
この産業界のクリーンエネルギーのコストダウンの試みは、1つの国だけで実現することは非常に困難であり、世界各国が、それぞれの強みを持ち寄り、協力しながら実行されています。
このクリーンエネルギー産業の1つの国際協業のフレームワークが、欧米を中心とした先進国がコア技術を提供し、中国が製造するモデルです(図24)。このモデルを、国際協業モデルと名付けます。

つまり、先進国で開発された最新技術をベースに、中国の安価な労働力とサプライチェーンを含めた製造能力を利用して、クリーンエネルギー製品価格を引き下げ、化石燃料に対抗する作戦です。太陽光発電パネルは、その最たる例です。
中国に製造拠点のない企業には出資しない
筆者が話をしている米国ベンチャーキャピタルのほとんどが、中国に製造拠点を持っていない、もしくは、持つ計画のない太陽光ベンチャー企業には出資しないと公言しています。
ただし、このモデルには問題点もあります。中国での技術の知的財産権(IP - Intellectual Property)保護の問題です。
中国の知的財産法体系は、まだ整備途中であるため、先進国企業は、所有する知的財産が、自国と同様の扱いで、保護されると考えるのは危険です。
中国においては、どのタイプの技術を特許申請すべきか、例えば、絶対にコピーされては困る本当のコア技術は、中国では特許申請しないなど、技術を中国に持っていく先進国企業は、しっかりしたIP戦略を立てる必要があります。