第3部 グローバルビジネス最前線
近年クリーンエネルギー産業は飛躍的に成長したものの、競合相手である化石燃料に対して価格競争力で見劣りしていることは、前に述べた通りです。
そして、この現状を打開するために、国境を超えたグローバルスケールで、クリーンエネルギーの競争力を高める試みがなされています。
言い換えると、世界各国がコラボレーションしながらクリーンエネルギーという新しい“パイ”作りに励んでおり、現在そのパイの大きさは1620億ドル(14兆5800億円)に達しています(第5回連載参照)。
そして、このパイを各国協力しながら、さらに大きくしようと共同作業をしている一方、出来上がったパイをどの様にスライスし、誰がどの部分をどれだけ食べるのか、既に列強各国がテーブルについて、ナイフとフォークを持って、駆け引きを始めているのです。
今回は、グローバルビジネスであるクリーンエネルギー産業の持つ2つの側面、パイ作り、つまり国際協力と、出来上がったパイのスライスの奪い合い、つまり国際競争について、それぞれの現状を分析します。
クリーンエネルギーの国際協力
クリーンエネルギーの国際協力には、政治的イニシアチブと経済的イニシアチブがあります。
既にご承知の通り、そもそもクリーンエネルギー普及の大きな動機には、地球温暖化阻止という地球規模の環境問題の解決があります。
国際社会が協力して、世界のCO2の排出を削減する枠組みやルールを策定・実施することでクリーンエネルギー普及を支援する試みを、ここでは政治的イニシアチブと呼びます。この代表的なプログラムが、前に紹介しました、国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)です。
2009年12月にコペンハーゲンで開催された、第15回気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)では、CO2の最大排出国である中国や米国が具体的なCO2削減目標を示し、2013年以降の京都議定書後のCO2削減の新たな国際的な枠組みが採択されるのではと大いに期待されましたが、結局、合意に至らずに、残念な結果に終わりました。
このCOP15の失敗の影響やクリーンエネルギー産業における政府・政策の役割については、このあとの連載でより深く分析します。