カリフォルニア州パサデナで開催されたローズ・パレードで、上空にスカイライティングで描かれた「Trump is disgusting(トランプにはむかつく)」の文字〔AFPBB News

 過激な発言をすればするほどドナルド・トランプ氏(69)は自分のブランドの価値を落としている――。

 暴言と呼んで差し支えない発言を繰り返している共和党大統領候補のトランプ氏。過去の大統領選では、1つの発言ミスで支持率を落として姿を消した候補も少なくなかった。

 しかし同氏は暴言などものともせず、むしろ過激な意見や失言をプラスの方向に換える力を持つかにさえ見える。それでも今、「トランプ・ブランド」に傷がつき始めたとの見方が強まっている。

 共和党レースでは、全米レベルで支持率トップを維持しているが、トランプ氏の言動によって自身の首を絞める結果が出始めているのも事実である。

トランプ躍進4つの理由

 本題に入る前に、なぜここまでトランプ氏が躍進しているのか。筆者の分析を簡単に述べておいたい。

1 利益団体から選挙資金を受け取らない。富裕層の献金者やロビイスト、企業・団体などから選挙資金を受け取らない。影で誰からも操られていない点が多くの有権者に評価されている。

2 ビジネスでの成功者である。4回の破産を経験しながらも、総資産87億ドル(約1兆円)を築いた手腕は並みのビジネスマンではない。破産を乗り越えたという経験も逆に評価され、政治家としても期待がかけられている。

3 本音をストレートに語る。小学校4年生でも分かる容易な英語を使い、有権者が抱く本音を言葉にしている。既存の政治家にはない発言力に一部有権者は心をつかまれている。

4 行動力への強い期待感。政治家ではないからこそという期待感がある。不動産業で多くの交渉をまとめた実績から、パレスチナとイスラエルの中東和平も「半年くれれば実現できる」と豪語する。有権者は本当に実現できるかもしれないとの思いを抱く。

 既存の政治家ではないからこそ多くの課題を克服できるかもしれないとの期待がある。その一方で、多くの有権者は「危ない候補」との認識を共有する。共和党の代表候補、さらには米大統領に当選させてしまうと対外的に米国を孤立させるとの憂慮もある。