昨年の出馬直後、メキシコ人に対する蔑視発言によって、米メディア大手NBCユニバーサルがミス・ユニバースのテレビ放映を中止。さらに米スペイン語放送大手のユニビジョンもミス・ユニバース関連イベントを今後一切放映しないと表明した。
米百貨店大手メーシーズはトランプ・ブランドのメンズ用アパレルを今後は扱わないと発表。それに対してトランプ氏は「NBCもメーシーズも不法移民を支援してるってことだな」と反駁したが、ブランド力の低下は免れない。
それだけではない。イスラム教徒の米国入国の禁止を言い放ったことで、その影響は世界へと飛び火した。
日本ではほとんど馴染みがないアラブ首長国連邦に本社を置くインテリア用品大手「ライフスタイル」は2015年12月9日、中東、アフリカに展開する195店舗から、トランプという名前の商品をすべて撤去することを決めた。
世界中のイスラム教徒を敵に回す
同社CEO(最高経営責任者)サッチン・ムンドゥワ氏は「トランプ氏はイスラム教を信奉するすべての国で、自分のブランドを汚してしまった。もう誰も彼を信用しないだろう」と語ったが、問題はそれだけではない。
全世界に18億人いると言われるイスラム教徒を侮辱し、敵に回したに等しい。
また、2014年にトランプ氏が購入した英国の有名ゴルフコース、ターンベリーは買収後に「トランプ・ターンベリー」と改名。2020年全英オープンの開催地に予定されていたが、トランプ氏の数々の発言により関係者から「同地での実施はあり得ない」という声が漏れている。
米東部にあるラトガース大学経営学部のアシュワニ・モンガ教授は「自分のブランドを傷つけたことは明らか。多くの人は彼のブランドへの関心を失ったし、今後は支持しない可能性さえある」と述べている。
「ブランドが最も重要なアイテム」と述べた人物にしては大きなマイナスである。
ただ資産約1兆円を抱えるトランプ氏だけに、実質的な財政的打撃には至っていないかもしれない。大統領選で使途すると思われる100億円ほどの自己資金にしても、「ピーナッツに過ぎない」(トランプ氏)と述べている。
しかも、暴言を繰り返しても支持率は下落せず、高止まりしたままだ。
それでも共和党の代表候補になれば自身のブランドだけでなく、伝統的な共和党のブランド、ひいては米国の威信を大きく傷つける結果を招きかねない。米有権者がどう判断するのか、まずは予備選前半の結果を眺めたいと思う。