本当は血圧の上昇を抑える味噌

味噌は体に良いのか悪いのか?(後篇)

2015.11.20(Fri)漆原 次郎

 上原氏は、味噌に着目した経緯をそう説明する。日本人が自分たちの食生活に対して自信をなくしている状況を憂いていたともいう。

 上原氏は、まず学生とともに「Dahl(ダール)ラット」という、塩分の感受性が高い特殊なラットで味噌摂取の影響について実験した。同じ量の塩分を、食塩水で摂らせた場合と、味噌汁で摂らせた場合では、味噌汁摂取ラットのほうが食塩水摂取ラットより血圧が10mmHg(ミリメートル水銀柱)ほど低かった。

上原誉志夫氏。共立女子大学家政部食物栄養学科臨床栄養研究室家政学部臨床栄養学教授。医学博士。1976年、東京大学医学部医学科卒業。1978年、東京大学第二内科入局。米国ミネソタ大学内科学教室に留学、ルイス・トビアン教授に師事。その後、星薬科大学非常勤講師、東京大学保健管理センター助教授、保健センター副所長、保健センター駒場支所長。2009年より、共立女子大学家政部食物栄養学科臨床栄養研究室家政学部臨床栄養学教授、現在に至る。研究分野は臨床栄養学、健康科学、食塩と高血圧、内科系臨床医学。2015年10月に『高血圧ならみそ汁を飲みなさい!』(実業之日本社刊)を上梓した。

味噌汁摂取は30%の減塩効果に相当

 では、人では味噌汁の摂取が血圧にどう影響するのか。

 上原氏は東京都内の三楽病院と共同で、2010年から2014年までの5年間に人間ドック受診者を対象に味噌汁の摂取量と血圧の関係を調べた。男性330人(平均55歳)に食べものの摂取頻度を聞き取り、人間ドックの成績との関連性を見たのだ。

「5年間にわたり調査しましたが、味噌汁を飲む頻度が1日1杯でも、2杯でも、3杯でも、血圧の値との間に関連は見られませんでした」

 この研究で上原氏たちは、血圧が正常値(上が129未満、下が84未満)の人たちと、高血圧予備軍とも言われる正常高値以上(上が130以上、下が85以上)の人たちとに分けて比較してもみたが、どちらの群も味噌汁摂取頻度と血圧の関連性はなかったという。

「1日3杯については被験者の数は多くないので断言まではできませんが、1日に味噌汁1杯、ときに2杯という量では、まずもって問題ありません

 味噌の塩分は減塩製品でなければ白味噌で数%、辛口の赤味噌では13%ほどに上る。塩分の高い味噌なら味噌汁1杯で塩分1グラムほどになる計算だ。これを1日2杯飲めば、高血圧治療ガイドラインの目標値の3分の1を味噌汁で占めてしまうことになるのだが・・・。

 どうして、味噌汁を飲んでも、血圧の値に反映されないのだろうか。

「味噌汁を飲んでいると、塩分を摂っていても血圧の上がり方が鈍くなるのだと考えられます」と、上原氏は説明する。

 塩分を摂ると、血圧が敏感に上昇する体の性質を「塩分感受性」というが、味噌汁を日常的に摂取していると塩分感受性が低くなるというのだ。

 さらに、重要なことに、その効果は味噌汁に含まれる塩分にのみ当てはまるのでなく、あらゆる食材中の塩分に当てはまる。

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