世界の地域紛争に日本はどのように関与するべきなのか。関与の方法について見解の対立はあるにしろ、日本が地域紛争に何らかの形で関与すべきだという声は多く聞かれます。
しかし、米国では16年前に歴史家の「紛争は放置した方が平和になる」という主張をきっかけに論争が繰り広げられ、その後、統計データなどの実証研究からもそれを示唆する結果が出ています。
今回はその主張を踏まえ、日本の紛争への関与のあり方について考えてみます。
ルトワックが引き起こした大論争
日本でも戦略論の権威として知られ、安倍首相にもアドバイスを度々行っているエドワード・ルトワックは1999年8月、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に「地域紛争は放置した方が人道的である」とする趣旨の論文を寄稿し、大論争を引き起こしました。
その主張は次のように要約できます。
* * * *
今やあまりに多くの紛争が終わりなき戦いとなっている。その理由は、紛争勢力の一方の圧倒的な勝利、あるいは双方の疲弊という、戦争を終結へと向かわせる力学が外からの介入によって妨害されているからである。