今年の夏、旅に出られましたか?
人込みの行楽地にはうんざりだし、繁忙期は費用もかさむ。しかし、旅は違う世界への扉であり、思わぬつながりを知ることも少なくない人生の糧。やはりやめられない。
家族旅行なら、日頃、家族を顧みない、と冷たい目を向けられがちな父親の点数稼ぎにもなる。
7月から劇場公開中の『フレンチアルプスで起きたこと』(2014)の主人公、スウェーデンからフレンチアルプスの高級スキーリゾートへと妻子とやって来たトマスにも、そんな思いがあったのかもしれない。
しかし、安全とされている人工雪崩に遭った際、妻子を置き去りにし、逃げ出したことから大量失点。
気温が40度を超えたドイツ
さらに、トマスの行動は「生存本能によるとっさのもの」との解釈を語る友人を交えた会話で「自分は逃げていない」と主張。この嘘とも記憶の無意識の書き換えとも取れる行為から、関係を見つめ直す家族の物語はシニカルで深遠。
「不可抗力」を意味する原題のこの映画は、今年のカンヌ国際映画祭「ある視点」審査員賞を獲得している。
そんなフレンチアルプスの氷河融解が急速に進んでいる様が、先日、テレビでも報道されていた。ドイツでは40度を超える記録的猛暑。インドでは熱波で2000人以上が死亡。トルコは洪水で、パナマ運河は水不足で通航制限・・・。
世界中から熱波のニュースが絶えなかったこの夏は、日本も、とにかく暑かった。8月初め、東京都心は連続8日間の猛暑日を記録。路上の照り返し、空調室外機からの熱風。
ちょっと無理をすれば、熱中症寸前。都市特有のこもった蒸し暑さは、もはやエアコンなしでは乗り切れないことを実感する。できることなら、このコンクリートジャングルから逃避したい、とも考える。