「人工知能(AI)兵器は、暗殺、国家の不安定化、住民抑圧、民族浄化といったタスクに向いている。だから、その開発競争は、人類にとって、得があるとは思えない」
アルゼンチンで開催された国際人工知能会議にあわせ、スティーヴン・ホーキング博士やイーロン・マスク・スペースⅩ・CEOなど、著名学者、ハイテク企業トップ、1000人以上が署名した書簡が、7月28日、公開され、人間の操作を要さない「自律型兵器」開発競争への懸念を示した。
現在シリーズ最新作『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015)が劇場公開中の「ターミネーター」たちも、そんな自律型兵器の1つ。
人間狩りに奔走する機械
アーノルド・シュワルツェネッガーを一躍トップスターに押し上げた『ターミネーター』(1984)のT-800、『ターミネーター2』(1991)で登場した液体金属ボディでロバート・パトリックの不気味な警官姿が鮮烈だったT-1000、そして最新作で登場する「人間でも機械でもない存在」T-3000など、どれも、「人間狩り」のターゲットに迫りくるパワーとしつこさは圧倒的。とても尋常の人間では太刀打ちできない。
もう少し現実的(といっても、まだまだSFだが)なものならば、『ロボコップ』(2014)で、開巻まもなく登場する、近未来のテヘランで展開する米軍のドローンやヒト型ロボット兵士といったものもある。
対象をスキャンし、「抹殺すべき敵」と認識すれば、すぐさま殺害タスクを実行に移すこともある。
そこで米国は、相も変わらず「世界の警察官」ぶりを発揮しているわけだが、国内では世論に押され、ロボット警官配備は禁止されている。
何とか売り込みたい巨大軍需企業「オムニコープ社」は、「疲れ知らずで、怒りなどの感情に流されず、生身の警官も命をかける必要がなくなる」と、その効用を語る。一方、反対派は、「機械に人の気持ちが分かるのか」「命の尊さを知らない」「善悪の区別もできないだろう」と批判する。
そこで、オムニコープ社が考え出したのが、人と機械の合体。重傷を負い、脳と心臓と右腕以外すべて機械に置き換えられたサイボーグ、「ロボコップ」がその第1号である。思考や判断は人間の脳が行うところがポイントだ。
しかし、ロボットとしての自分と人間の心の間で葛藤が続くことになる。オムニコープ社にとっては、人の部分は攪乱因子、考えていたほど意のままにならない不満がある。