ギリシャと言えば古代遺跡

 世界中が動向を見守る、財政支援をめぐり混乱の続くギリシャ。

 我々は、この国の風景を、旅番組のおかげで、よく知っている。教科書を開けばすぐ出てくる古代の歴史も、知っている。だから、「ポリスの民主政」も知っている。このところよく見かける言葉「ギリシャ悲劇」だって、文学、絵画、映画のモチーフとして、知っている。

 しかし、市民生活の現実は、よく知らない。現代史も、よく知らない。ギリシャ悲劇も、それ自体は、よく知らない。

 それでも、映画ファンなら、3大ギリシャ悲劇詩人の1人、エウリピデスの作品を『その男ゾルバ』(1964)で知られるマイケル・カコヤニス監督が3本映画化しているから、少しは、知っているかもしれない。

 トロイ戦争の英雄アガメムノン王が、クリュタイムネストラ妃の愛人アイギストスに暗殺され、アイギストスが王位についた。オレステス王子は何とか国外に逃亡。

ギリシャ暗黒の戦中期の物語

 しかし、エレクトラ姫は事実上の軟禁状態、やがて農夫と結婚させられた。月日は流れ、エレクトラはオレステスと再会、ピュラデスの助けを借り、王と王妃を暗殺し・・・。

 アカデミー外国語映画賞にもノミネートされたその第1作『エレクトラ』(1962)の何とも、おどろおどろしいあらすじである。

 テオ・アンゲロプロス監督の『旅芸人の記録』(1975)にも、同様のプロットが出てくる。1939年から52年、軍事独裁、第2次世界大戦、内戦と続いたギリシャ暗黒の戦中期の物語は、そのまま、「エレクトラ」の話ともなっているのである。

 そんな旅芸人たちの「ギリシャ悲劇」とともに、教科書や旅番組で「勉強」することもないギリシャの民主主義との格闘の現代史を、追ってみることにしよう。<>内は、映画の言及していない事実の補足である。

 1952年秋、一座はギリシャの田舎町エギオンにやって来た。