米NY州の脱獄、情報提供に懸賞金10万ドル

米ニューヨーク州ダニモーラの刑務所で、2人の受刑者が脱走するために切り開いた房室の穴〔AFPBB News

 6月6日、厳重警備で知られる米国ニューヨーク州クリントン刑務所から、受刑者2人が脱獄した。170年前の開設以来、初めてのことだという。

 メディアは「まるで映画のよう」などと形容、明らかにされた「壁、配管に(恐らく電動工具を使い)穴を開け、マンホールから外へ」という逃走法は、確かに、スティーヴン・キングの短編の映画化『ショーシャンクの空に』(1994)に類似している。

 しかし、無実の罪で服役するフィクションの主人公は、穴を完成させるまで、20年近い歳月を費やしている。そんな自由を求める執念、逆境にあっても希望を捨てない心が、多くの人の感動を呼んだ作品である。

 今回の事件は「ベッドに衣類がつめこまれ、寝ているように見せかけていた」とも伝えられている。

 そんな手軽なトリックより、『アルカトラズからの脱出』(1979)のクリント・イーストウッド演じる脱獄する主人公フランク・モリスの「紙屑、粘土、穴の削りかすなどで、自分に似せ作った人形」の方がずっと手が込んでいるが、実のところ、この映画は実話がベース。

FBIの捜査もむなしく事件は闇の中

 本土から2キロほど沖、サンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島あたりは、潮の流れが速く、水温も低い。岩盤の島でトンネルも掘れない。刑務所は看守の数も点呼回数も多い。だから脱獄に成功する者はいなかった。

 しかし、獄舎の湿気、塩分による老朽化を見て取ったモリスは、爪切、スプーンなどを使い、壁に穴をあけた。そして、2年後、穴、通気口を経、煙突を登り、屋根を伝い、用意してあった筏で、2人の仲間とともに、闇へと消えた。

 看守が気づいたのは翌朝。FBIが捜査、筏の一部などを見つけたが、結局、溺死の可能性が高いとはいえ、遺体は発見されていない。

 それから1年後の1963年、財政上の理由から、刑務所は閉鎖された。86年、国定歴史建造物に指定、いま、サンフランシスコ市街から気軽に行ける人気の観光地となり、多くの映画の舞台ともなっている。