衆議院本会議、安保法案を可決 国民に怒り広がる

国会議事堂前で、衆議院平和安全法制特別委員会が可決した安全保障関連法案に抗議するデモに参加した市民団体のメンバー(2015年7月15日)〔AFPBB News

 安保法制の国会審議は参議院における熱い夏の陣に入った。

 政府与党はますます緊張を増すアジア国際情勢のもとで我が国の安全を確保するためには、日米同盟を強化し、ASEAN(東南アジア諸国連合)ならびにオーストラリアなどと連携する必要上、集団的自衛権の一部の行使が不可欠でありそれは合憲であるとし早期成立を期す。

 これに対し、野党は政府の施策は立憲主義に反して納得できないし国民の多くが反対であり、歴代の内閣・内閣法制局が守ってきた最も重要な憲法解釈の変更を一内閣が勝手に変更すべきでない、あるいはこの暴挙は平和憲法の根本を崩すもので決して許されず必ず廃案に追い込むと息ばんで対決姿勢を露わにしている。

 学会では憲法学者を中心に明確な違憲であり、解釈変更は法の安定性を損ない戦後政治の基本を揺るがすとし、マスコミ・進歩的文化人は「徴兵制」「治安維持法」まで持ち出して国民を怖気づかせ、世界に誇る平和憲法を壊し戦争への道に逆送するもので決して許せないと反対の声を大きくしている。

 このため一般国民の中にもこの影響を受け、戦争反対・戦争をする国にするなと抗議行動を展開している向きもある。

問題の根源は本音と建て前の使い分け

 この安全保障を巡る我が国および社会の分裂的現象の根源は、第1には政府・与党側が国政の紛糾を回避しようとし本音と建前を使い分け、なぜそれが必要かの本当の背景を言わず、またそのための負担とリスクをはっきり明言し国民に覚悟を求めないからだ。

 野党にそれでは戦争するのかと聞かれても「自衛権を発動する」と答え、一般用語の自衛戦争という言葉を避けるのでこのため国民に国家国民の命をかけて国を守る危機感と決意が生まれてこない。

 加えて野党も、国民の戦争反対姿勢を利用し、政府の本音と建前の矛盾追及のみに走っている。

 憲法学者は自己の学問的視点にのみにこだわり現実の日本国家と国民の安全保障の具体策構築に考慮を露も顧みず、マスコミ・進歩的文化人達も実際の国際社会の変化の実態を知りつつも、特殊な環境で成立した憲法の観念的価値感のみを礼賛し、事情変更に伴う解釈の変更の必要性に頬被りして専らガラパゴス化したステレオタイプの情緒的ポピュリズムに流れている。

政府与党に求めたいこと

 急激に台頭する中国は、当面西太平洋とアジアを支配下に置こうとして、力を背景に既存秩序に挑戦しつつある。

 その増大する軍事力に日本だけでは到底対応できないばかりか、力を減衰しつつある米国もかつての一極支配の面影は既になく、中国に対抗するための欧州、中東からアジア太平洋への兵力のリバランス計画も情勢上頓挫し、単独での対応が困難になりつつある。

 このため、米国は日本、ASEANおよび太平洋州諸国と連合して中国に対応せんとしているが、ASEANと太平洋周諸国が連合するためその地域リーダーの日本の先駆的行動が求められる。