今回の原稿は週末ワシントンからの帰国便の中で一気に書き上げた。安倍晋三首相による戦後70年談話の発表は米国東部時間で8月14日早朝。米政府関係者とワシントンの日本大使館館員には朝早くから「ご苦労様」としか言いようがない。
というわけで、今回のテーマは戦後70年談話をめぐる米中の温度差から垣間見える米中関係の行方である。
ホワイトハウス報道官声明
安倍首相による戦後70年談話の発表は東京時間で8月14日午後6時、ワシントン時間では同日早朝5時だった。さらに、日本政府による諸外国に対する事前通報は、閣議決定である以上、東京時間で同日午後5時(ワシントン時間午前4時)から開かれる臨時閣議の後とならざるを得ない。
そのような時系列の中でホワイトハウス報道官が「歓迎声明」を関係者にメール送信したのはワシントン時間の午前9時56分だった。たまたま同日10時過ぎに旧知の米政府関係者と雑談する機会があったが、その人物も既に同声明を持っており、早速筆者にもコピーをくれた。やはり持つべきは友人だ。
さて、ホテルに帰ってこの一見素っ気ない米政府の短い正式声明を読み直してみた。元公務員の性なのか、行間から多くのことが読み取れた。10年前までこんなことばかりやっていたからか、どうもこの種の文書は行間が気になるのだ。筆者が注目した声明の内容と筆者のコメントをご紹介しよう。
●我々は、第2次大戦中に日本がもたらした被害に対し安倍首相が痛切な反省を表明したこと、および歴史に関する過去の日本政府の声明を引き継ぐというコミットメントを歓迎する。
We welcome Prime Minister Abe’s expression of deep remorse for the suffering caused by Japan during the World War II era, as well as his commitment to uphold past Japanese government statements on history.
【筆者コメント1】
安倍首相の「痛切な反省の表明」を歓迎するということは日本に対し「お詫び」までは求めないということ。「過去の政府の声明」を引き継ぐことを歓迎するということは、米国政府の理解として、これらの声明の中に村山・小泉談話だけでなく、いわゆる河野談話をも含むことを暗示している。