不況がもたらす雇用不安が話題になっています。特に2009年中に契約が切れる多くの派遣社員が契約を更新してもらえず、2009年3月までに失業者が少なくとも8万5000人に上るという事態が予測されています。
いきなり派遣の仕事がなくなり、寮を出なくてはならなくなってしまった人たちの困惑は察するに余りあるものがあります。仕事が決まるまでの間、住居を斡旋したり、生活一時金を貸し付けるなど、セーフティーネットの施策は必要でしょう。
それでも、それらは一時しのぎ的な解決策にしかなりません。実際には雇用を失った人たちへの自立支援が必要になってくると思います。よく言われるように、「魚を食べさせてあげるのではなく、自分で魚を取れるように教えてあげる」必要があるということです。
医療の現場では人手が足りない
ちなみに、私は医療分野で働いているからかもしれませんが、雇用不安を煽っているような昨今の報道には少し違和感を感じています。なぜならば、医療現場では人手不足が深刻で、ギリギリの人数でその日の仕事をこなすだけで精いっぱい、という所がほとんどだからです。
それを裏づけるデータとして、2008年11月の東京都のハローワークの有効求人倍率があります(有効求人倍率とは、ハローワークの求人者数を求職者数で割った数字です。例えば、この数値が3だとすると、3つの職場が1人の求職者を奪い合っているということになります)。
倍率が高い順に見ていくと、次のようになります。
接客・給仕の仕事 5.93倍
医師・薬剤師など 4.97倍
保健師・助産師など 3.73倍
情報処理技術者 3.72倍
介護関連 3.54倍
そのほか福祉 3.16倍
逆に倍率が低い仕事を見てみると、次の通りです。
一般事務員 0.27倍
会計事務員 0.28倍
このデータからすると、雇用が全くないわけではありません。求人が減っている業種もあれば、求人が満たされていない業種もあるのです。つまり、現時点での「雇用不安」とは、雇用のミスマッチ(需要と供給が一致していない)であると理解することもできます。