米ニューヨーク・タイムズの記事によると、例えばカリフォルニア州の裁判所は、ライバル企業への移籍を禁じる「競業禁止条項」を好ましくないと判断する傾向にある。このことからHP側は秘密保持契約に争点を絞ることになるが、今回の場合やはりHP が不利だという。カリフォルニア州では「必然的情報漏洩」という考え方を採用したことがないからだ。
つまり、ハード氏が情報漏洩することが明らかになっていない現段階で、将来の「可能性」をもって裁判所が差し止め命令を出すことは難しいというわけだ。
米ウォールストリート・ジャーナルも、カリフォルニア州ではライバル企業に移籍した人物を相手取る訴訟で企業側が勝訴することは難しいと伝えているが、今回のハード氏の場合、裁判所がいくらかでもHPの主張を支持する余地があるかもしれないとしている。その人物の前職の地位が高ければ高いほど、企業側にとっては有利になるというのだ。
HPは訴状で、ハード氏がHPの将来の製品に関する会議に出席していたこと、価格情報や部品、製品コストの情報にもアクセスできたことなどを挙げ、HPの機密情報は今危険にさらされていると訴えている。HPの主張するこの情報漏洩の「可能性」を裁判所がどう現実的なものとして重視するかが、この訴訟のカギになると記事は伝えている。
「我々に対する報復訴訟だ」とエリソンCEO
オラクルのエリソンCEOはHPを痛烈に批判〔AFPBB News〕
ハード氏のオラクル移籍を巡っては、このほかにも様々に報じられている。例えば、英フィナンシャル・タイムズは、オラクルという会社の規模がHPの4分の1程度であり、その会社で前職より下の地位で働くハード氏の行動を疑問視する声があると伝えている。また「オラクルの真の狙いはHPの機密情報であり、同社はそれを得るためにハード氏を雇い入れた」とするHPの主張にも触れている。
一方で前述のウォールストリート・ジャーナルは、HPとのオラクルの間で金銭をもって和解するというのが現実的な解決策だと伝えている。これによりHPはハード氏に支払った退職金(3500万ドル以上と言われている)の一部を取り戻せるというわけだ。
なおオラクルのエリソンCEOはHPの提訴を受けて同日声明を出した。この中で同氏は、「(この訴訟は)オラクルやハード氏に対する報復訴訟だ」とHPを痛烈に批判している。

