現地を知り、日本を知る
ところで、今回のOJT研修には女性も2人参加していた。菅原香さんと進藤恵理さん。
ミャンマーに来るまでは、毎日、山手線や横須賀線を運転していた。毎朝作業の現場に立って本領発揮している小玉さんや濱尾さんとは違い、ヤンゴン市内にあるミャンマー鉄道の敷地内のオフィスで保線の資機材などの管理業務にあたっている。
初めての地方出張となったこの日、2人は激しい揺れに驚きの声を上げながらも、沿線の住居や農作業に励む人々など、車窓の景色を食い入るように見つめている。
日本では安全性や突発的な出来事への配慮を怠らず、発車時の加速や停車時の減速、そして走行中の乗り心地にも気を配りながら、さらに定時運行を求められる彼女たちの目に、上下左右に揺れたかと思えば田んぼの真ん中で突然停車したり、子どもたちが線路の上で遊んでいるこの国の鉄道はどう映っているのだろうか。
「もし、この列車を運転しろと言われたらどうする?」とからかう小松さんの言葉に、2人は「あり得ない」とばかりに激しく首を振る。
ふと、菅原さんが車内に目を戻し、何が起きても当然のように黙って席に座っている人々を眺めながら「鉄道って本当はもっと快適なものだということを知ってもらいたい」とつぶやいた。
奇しくもこの言葉にこそ、このOJT研修に込められた目的や意義が集約されていると感じるのは筆者だけだろうか。