話を戻そう。あちこちで開かれるミャンマーセミナーで繰り返しアピールされるのは、5000万人という同国の人口規模と豊富な天然資源に加え、中国、タイ、ラオス、インド、バングラデシュの5つの国と国境を接し、東アジア、東南アジア、南アジアを結ぶ結節点に位置しているという地政学的な重要性だ。
実際、同国は、東西経済回廊(ベトナム・ダナン~タイ・ミヤワディ)の延長線上にモーラミャインが、また、インドシナ半島を横断する「南部経済回廊」(ベトナム・ブンタウ~カンボジア・プノンペン~バンコク)の延長線上にダウェイが位置しており、南シナ海とインド洋を結ぶランドブリッジの要衝にあたる。
しかし、東西約1000km、南北約2000km、面積67万7000平方kmという国内のコネクティビティーはというと、まだまだ一筋縄ではいかない。
そしてそれは、人々が「アッパー・ミャンマー」と呼ぶ北部の山岳地域や、水路が網の目のように走る南部デルタ地域の「ロウアー・ミャンマー」など、多岐にわたる地形のせいばかりではないようだ。
浮橋を渡るトラック
2013年5月末、ミャンマー国内の東西回廊(モーラミャイン~エインドゥ~ミヤワディ)の一部を走ってみた。モーラミャインを朝8時前に出発。途中、鉄橋が架かっている場所で2回ほど車を降り、視察しながら進む。
約10年前にカンボジアで第二東西回廊を走った時、時速15km程度しか出せなかったことを思い出し、かなりの悪路を覚悟していたのだが、拍子抜けするほどスムーズに走行できる。
スピードメーターに目をやると、時速60kmを指している。舗装が比較的良好なのは、BOT(Build, Operation and Transfer)方式、すなわち、民間事業者が建設し、利用者から料金徴収を行いつつ維持管理を行った上で、一定期間後に政府に返還する方式がある程度奏功しているということだろうか。
11時過ぎ、目の前に大きな橋が見えてきた。コーカレイ橋だ。全長400mの吊り橋で、1999年に建設されたという。
海外からの支援が途絶えていた中、独自の資金でよくぞこのような長大橋梁を建設したものだと感心したのもつかの間、大きな積み荷を載せた大型トラックが、次々と橋のたもとで止められ、水面に向かい河岸を降りていくのに気付いた。