筆者は緑内障専門の眼科医として、大学病院に勤務している。研修医時代から、いわゆる「都市部の病院」に15年間勤務した後、2005年に「地方の病院」である自治医大に赴任したのだが、一番驚いたことは、重症緑内障患者が、視野狭窄による安全確認の不足が原因と疑われる事故を起こしていたことであった。
公共の交通機関の発達した「都市部の病院」では、患者自らが運転することは、ほとんどない。一方、「地方の病院」の患者は、公共交通機関の便が悪い上に、路線バスの撤退などが追いうちをかけて、通勤・通学・通院・買い物などに車の運転は欠かせない。
その重症緑内障患者は、「運転はやめました。人身事故を起こしてしまって・・・対物事故を3回起こし、まずいな、とは思っていたのですが、通勤のため車は必要で、運転を続けていました。ある日、交差点を左折した時に、歩行者がいるのに気づかず、ひっかけてしまったんです。幸い怪我は軽かったのですが・・。」と振り返った(注1)。
主治医でありながら、運転していることすら知らず、何の注意も与えなかったことが悔やまれた。ほかにも、外来では、「信号やウインカーが見づらい」「突然横に車がでてきてびっくりした」「赤信号が青になったのに気がつかなかった」など、運転に対する不安を聞くことも多い。