ヤンゴンから北に約300km。サトウキビやタケノコが生えるのどかな丘陵地帯だったこの地に、突如、首都機能が移されたのは2006年11月のことだ。ホテルゾーン、商業ゾーン、行政ゾーン、住居ゾーンと明確に区分けされ急ピッチで建設されたこの街はとにかく広く、ゾーン間の移動も車で20~30分はゆうにかかる。

 ここ運輸省は、当然、行政ゾーンに属しているはずだが、周囲にはこんもり茂った木々が生えているだけで、他の省庁の建物は影すら見えない。

 諸外国からの投資や資金援助が長く滞っていたミャンマー。しかし、実はこの間も、地方の鉄道や道路は延伸工事が進められていたのをご存知だろうか。

 例えば鉄道は、1988年以降、総延長距離が2000km近く延びた。しかし、既存の道路や鉄道の維持管理は、その分、必然的に後回しとなり、老朽化が進行した。

 新政権の発足後、支援を再開した援助機関が運輸交通セクター分野でも次々と協力を申し出ているほか、各国の民間企業からの提案も急増しているが、ミャンマー側が国全体の運輸交通開発戦略を有していないため、提案されたプロジェクトの優先付けと投資効果の検討を十分に行うことができずにいる。

 こうした状況を受け、特に幹線道路や鉄道、国際港湾、国際空港など、経済開発に直結する基幹インフラを中心とした運輸交通セクターの開発シナリオを策定するため、2012年末からJICAによる「全国運輸交通プログラム形成準備調査」が始まった。

 総勢30人から成るコンサルタントチームが、道路、鉄道、水運、航空の4つの交通モードについて現状分析と需要予測を実施。2030年の目標年までにどのような戦略と順序でインフラ整備を進めるべきか、段階的な実施計画を策定するとともに、近々実施すべき優先プロジェクトを数件提案し、その実現可能性も確認するという内容だ。

 ヒアリングや現地踏査を通じて各交通モードごとにミャンマー側の要望とニーズを確認し、実施計画案や優先プロジェクトについて協議を進めた結果は、全関係者が一堂に会する合同調整会議(Joint Coordination Committee:JCC)の場で定期的に共有・確認される。

 2012年12月と13年2月に続き、3回目の開催となった13年5月のJCCの議題は、優先プロジェクトの対象。協議の結果、優先度の高い鉄道と内陸水運を事業化調査(F/S)の対象とすること、また、道路についても優先度の高い東西回廊の一部を成す区間について、将来的な事業化のための調査を実施することで合意した。

 彼らの姿を見ていると、かつて日本で所得倍増が叫ばれていた頃、「全総」(前回参照)を策定し、道路や港湾の整備を進め、インフラ整備を通じて復興から開発へと国の発展を牽引、高度成長期を迎えた当時の人々の姿と重ねたくなる。

 まさに、日本の国作りの経験が、ここミャンマーでよみがえろうとしている。

両国の関係者が集まった第3回JCCの様子
ネピドーの広大な市内の各ゾーンを広い道路が結ぶ