ショートというポジションから野球の真髄を探る

 まずは、アメリカで不遇の2年間を過ごした中島裕之選手。メジャーリーグに昇格できず、マイナーリーグでも苦戦。今年からオリックスに移籍しました。

 ただ、日本でプレーしていた時には3度もショートでゴールデングラブ賞を取った実力者。そのショートというポジションから野球の真髄を探っているのが、その名もずばり『遊撃手論』(矢崎良一著、久慈照嘉監修、PHP研究所)。

 発行は、2009年。当時、阪神のコーチだった久慈さんや、現役だった元ヤクルトの宮本慎也さんへのインタビューを中心に、ショートの醍醐味や、チームの中での役割を通しての組織論などを展開しています。

『遊撃手論』(矢崎良一著、久慈照嘉監修、PHP研究所、1512円、税込)

 現巨人の井端弘和選手が2013年開催の「ワールド・ベースボール・クラシック (WBC)」で大活躍した際には、すでに井端選手を大きく取り上げていた本書の先見の明に、思わず唸ってしまったものです。

 また、ファンにとって嬉しいのが、当時の各チームの主力や若手の選手についてのそれぞれのプレースタイルの解説。阪神の鳥谷敬選手、巨人の坂本勇人選手など、現在も一線級で活躍している名前が取り上げられていることです。当時の彼らへのコメントと現在の彼らのプレーとを比較してみて、進化した点を探すのも1つの楽しみになることでしょう。