バカンスシーズンも終盤にさしかかった8月中旬、トップニュースとしてある映像が流れた。それは、ROM(ロマ)と呼ばれる人々の集団が、チャーター機によって国外追放されるというものだった。
フランスから300ユーロもらって国外追放されるロマ人たち
しかも、彼らは大人1人当たり300ユーロ、子供は100ユーロをもらって、本国ルーマニアに帰るというのだ。
これは、7月にROMを含む人たちによる、商店や警察の襲撃が続いたことを踏まえて、今後の犯罪を防止し、フランス国民の安全を守るという目的でとられた政府の措置の1つ。
また、彼らがバラックなどを作って居住する、国内に300カ所あるというキャンプをなくすことも同時に行われつつあるという。
ROM、日本語でいうとロマ人という人々は確かに、フランスではあまり良いイメージでとらえられていない。道路に座り込んだり、異様に曲げた足を引きずりながら物乞いをしていたり、メトロの乗客を狙ったスリなどにロマ人を見かけることは少なくない。
パリのいくつかのメトロのホームでは、「スリ被害が頻発しております。お手持ちのハンドバッグにはくれぐれもお気をつけください」という日本語のアナウンスが流れるほどだ。
1日の稼ぎは分厚い札束に
私自身、数年前には実際に、ロマ人とおぼしき少年2人にバッグを狙われそうになったことがあり、同じ日に、その彼らがポンヌフの橋の欄干に腰を降ろして、1日の稼ぎでもあろうか、遠目にもだいぶ厚いことが分かるユーロの札束を数えているのに出くわした。
ところで、このロマ人というのは、そもそもどういった人々かといえば、移住民族の中でも特に、10世紀頃に、インドの北西地方からヨーロッパ方面に移住してきた人々のことで、ジプシーなどとはまた違うらしい。
特に東ヨーロッパに多く存在してきたが、虐げられることが多く、奴隷として使われた時代もあったし、ナチス支配下のドイツでは、強制収容や虐殺の対象にもなったという苦難の歴史を持つ。
現在でも、やはりルーマニアやブルガリアを中心とした東欧に多く、ルーマニアには、約200万人のロマ人がいるという。ちなみに、フランスには約1万5000人いると言われている。